New Terms & Usages 《新語・新用法紹介》

話題となっている語、いかにも今という時代を感じさせる新しい用語、馴染みの語の新しい用法をご紹介。過度に専門的と思われるような用語はできるだけ避けたいと考えています。

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No.43 "kill" なぜここで、"kill"を採り上げるのか。

6月11日の合衆国の報道媒体はTimothy McVeigh関連の報道で埋め尽くされていた。合衆国が日本国とは全く別個の社会であることの何よりの証左だった。

以下は、Timothy McVeighの死刑執行(2001年6月11日)に関し、彼の弁護士ロバート・ナイ[Robert Nigh]氏が公表した所感[remarks](Timothy McVeigh's Execution from Washington Post.com, Monday, June 11, 2001)より。出色の文章である。全文に目を通すことをお勧めする。

(注)ティモシー・マクベイ(33歳)は、1995年にオクラホマ市にある連邦政府ビル[the Alfred P. Murrah Federal Building]を爆破し168名(内19名は子供)を殺害した廉で死刑判決を受けていた。湾岸戦争に従軍[Gulf war veteran]。

まず、この所感の冒頭。

At 7 a.m. this morning, we killed Tim McVeigh, the person responsible for the Oklahoma City bombing. But we did much more than that. We also killed Sergeant McVeigh, the young man who joined the Army because he wanted to serve his country; the young soldier that was so dedicated to his duty that he became the top gunner in this battalion of 100.

今朝午前7時、我々はティム・マクベイを、オクラホマ市でのビル爆破に責任を負うべき人物を殺した。しかし、我々がなしたのはそれにとどまらない。我々が殺したのはまたマクベイ軍曹、祖国のために働くことを望んで陸軍に加わった若者、自らの任務に忠実であること目覚しく100名からなる中隊の中で最高の砲手となった若者でもあった。

犯罪の匂いも、激情の痕跡も、過失や事故の雰囲気もうかがわせない"kill"など、そうそうお目にかかれるものではない。そもそも、主辞が人である場合、その直後に"kill"が続くこと自体が稀なのである。主辞が人である場合、"kill"はその形を変えたり、その位置が微妙に変えられることになる。主辞の直後に"kill"が続く場合、主辞の殆どは人ではなく、もの・事柄・事件となる。

以下は、"kill"が主辞の直後ではない位置に置かれている例。

Fredrick Radford shot his wife first and then killed a woman who attempted to take their 2-year-old son away from the alleged gunman, police and witnesses said.

フレデリック・ラドフォードはまず妻を射撃し、続いて、彼らの二歳の息子を銃撃犯とされている男の手から逃れさせようとした婦人を殺害した、と警察及び目撃者は語った。

(Two dead in church shooting(AP) from USA Today.com, 05/19/2001 - Updated 07:06 AM ET)

"kill"が主辞の直後に位置する例。主辞は「もの」である。
The last time a carrier-based aircraft killed someone on the ground during an exercise was in 1999. A Marine jet dropped a 500-pound bomb that killed a civilian on the Puerto Rican island of Vieques.

空母艦載機が演習中に地上にいる人の命を奪った最近の事故としては1999年のものがある。海兵隊のジェット機がプエルトリコのビエケス島の市民一人の命を奪う500ポンド爆弾を投下した。

(Pentagon trying to explain deadly Kuwait bombing By Andrea Stone and Dave Moniz, USA TODAY from USA Today.com, 03/13/2001 - Updated 08:44 AM ET)

理性を総動員して、慎重な熟慮を重ねた末に、殺す、これがこの所感中の"kill"の用法である。ために、その恐ろしいほどの生々しさが露出する。
We killed Bill and Mickey's son this morning. And we killed Jennifer McVeigh's big brother.

我々は今朝、ビルとミッキーの息子を殺した。さらに、我々はジェニファー・マクベイの兄を殺した。

なぜ、人を殺してはいけないのか。

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