Topics Around The World

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No.33 " Priming Young Minds" (by Brigid Schulte: Washington Post, Wednesday, February 9, 2000)

   「幼い子どもを仕込む」という見出し。「三つ子の魂百までも」というところか。早期の幼児《教育》が流行(深刻な現実に迫られての結果なのだが)していると言う記事。

Georgia and Tennessee give new parents Mozart CDs. Michigan sends every new mother home from the hospital with a video, a "Sesame Street" tape, fridge magnets and flashcards. Now Montgomery is joining a growing national obsession with babies' brains.

ジョージア州とテネシー州は初めて子供を持った親にモーツァルトのCDを配布している。ミシガン州は初めて子供を産んだ母親全員を、ビデオ一台、『セサミストリート』のビデオテープ一巻、冷蔵庫用マグネット、フラッシュカードと共に、病院から家まで送り届けている。そしていまやモントゴメリー郡も全国的な赤ん坊教育熱の輪に加わりつつある。

   "Georgia and Tennessee give new parents Mozart CDs."というのは"Mozart effect"(【New Terms and Usages】No.3 "Mozart effect"参照)というこれも一つの流行がもたらしている事態。この記事ではGeorgiaでもTennesseeでもMichiganでもなく、Montgomery countyが取り上げられている。babies' brainsの発達にまつわる5歳以下の幼児教育問題。

   《大脳神経生理学》の成果を踏まえての取り組みである。

Fueled in large part by recent neurological research showing how active infant brains are and how much they absorb, county and school officials are joining forces with private agencies to make sure families of the county's 60,000 children under age 5 know how to get youngsters' neurons firing and their brains wired for success in school.

幼児の脳がいかに活動的であり、いかに多くのことを吸収できるかを示す最近の神経学研究にもっぱら焚き付けられてのことだが、郡と学校の当局者たちは民間諸団体と力を合わせつつ、郡内の六万人の5歳未満の子供たちの家庭に、子供たちが学校で好成績を収められるよう、子どもの神経を活性化し脳神経組織を発達させる方法を確実に周知させようとしている。

   なぜか。脳が急速に発達する幼児期に脳が十分な刺激を受けることがないと、取り返しのつかないことになりかねないからだ。
"If you can get in there even before they're in kindergarten, you can make a profound difference. After that, you're just playing catch-up,"

「子供たちの幼稚園入園前に、そこ(注:幼児教育)に入り込む(乗り出す)ことが出来さえすれば、大きな成果をもたらすことができる。その後では、追いつこうとしているに過ぎなくなる。」

   主たる対象は貧困層で、結果的に黒人・ヒスパニック系の家庭ということになりそうである。黒人・ヒスパニック系の貧しい家庭の子供の学業成績が白人・アジア系に劣っているとある。
The academic performance gap between black and Hispanic students and their white and Asian counterparts shows up as early as pre-kindergarten screening tests, and continues even after one year of kindergarten, according to Montgomery County schools data.

モントゴメリ郡の学校資料によれば,黒人・ヒスパニック系の生徒と同年齢の白人・アジア系の生徒との学習成績の差は、早くも幼稚園入園前の選別試験のころには見て取れ、一年の幼稚園生活の後もそのまま残る。

   貧しさゆえに子供が置かれる家庭環境はどんなものになるか。一般的には次のような事態。子供の教育を考える余裕はないのである。
whose parents can't afford the latest stimulating toys and work so hard just to survive that they haven't time to think about what a child's rapidly developing brain needs.

その両親は子供の好奇心を刺激する最新のおもちゃを買う余裕がないし、ただ生きんがために厳しい労働をして日々をすごしているため、急速に発達してゆく子供の脳が何を必要としているのか考える暇もない。

   具体的な例。内戦でEl Salvadorを追われ、合衆国にやってきた女性(二人の幼い子供の母)の場合。
When she was growing up, her mother never played with her. So she never thought to play with and read to her children

彼女が子供の頃、母親は彼女の遊び相手になったことは一度もなかった。だから彼女は自分の子供たちの遊び相手になり、本を読んでやろうと思ったこともなかった。

(注) never thought to不「〜しようと思いもしなかった」

   現状を打破しようという努力が行われつつある。しかし、現実は以下の通り、Falling Behind Early「幼い頃から遅れをとる」と言えるものなのである。
Based on teachers' observations, Asian, black and Hispanic students entering kindergarten tend to perform below the level educators would expect. Teachers' year-end assessments show black and Hispanic students' math abilities tend to be below grade level, while Asians and whites are above, on average.

教師たちの記録によると、幼稚園に入ってくるアジア系、アフリカ系、スペイン系の生徒たちの学力は教育関係者が期待するような水準を下回る傾向にある。教師たちの年度末の成績評価によれば、平均すると、アフリカ系とスペイン系の生徒たちの数学の学力は学年水準を下回りがちだが、アジア系と白人系の生徒たちはそれを上回っている。

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