『雑想雑感』 (野島明) 
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あの世

   《聖なる戦いに倒れた私》を待つはずのあの世の様を想う。

ラァ、トゥ ネ コルドル エ ボォテェ(の地のなべては整然と華麗)
リュックス、カルム エ ヴォリュプテェ(豪奢に静寂、さらに悦楽)
   しかし、一抹の不安。

   この世は苦痛に過ぎるが、あの世はきっと退屈に過ぎやせぬか。

   美味と官能の永遠、美しい乙女らにかしずかれ給仕されるこの世のものとは思えぬほどの佳肴かこうの数々を満喫し、たおやかな乙女らが舞い奏でる甘美きわまる歌舞音曲を堪能せねばならない永劫。ほどなく倦怠とやがて止めどない肥満に見舞われるに違いない日々。

   それとも、朝、目覚めると、過ぎし日の記憶はすべて失われており、あらゆる悦楽は日々新たに感じられる永劫があの世なのか。

   あの世にちょっと注文。

   美しい乙女、大いに結構だが、私の好みはどちらかというとうら若い人妻、それも細身がいい。無論、美形でなくてはならぬ。「一盗二婢三妾」の王道を歩む私なのである。

   食卓には是非うまい刺身が欲しい。もちろん魚だ。それと魚の煮付け、大の好みは「ブリかま」だ。飲みものは極上の吟醸酒。

   《聖なる戦い》に身を捧げるのだ。この程度の注文をつけても罰は当たるまいさ。

  

記 〇五年十二月

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