『雑想雑感』 (野島明) 
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「生活のすべてがデザインの場である」ならば

   言葉が意匠と無縁ではないのは言うまでもないことであるが、「幅広いファッションの世界を究めたデザイナー」(注1)と紹介されている花井幸子氏はそうは考えていないように見える。

   (拍手)皆様こんにちは、花井ゆき子でございます。えー、今日は何がお話できるか、ちょっとよく、わたしあんまり、話しするのは得意じゃないんですけれども、何をお話しようかなって、一週間くらい悩んでるんですけれども、テーマは究めるっていうことなんですけど、何を究めたかっていうことなんですけども、うーん、結婚したのは二十二歳です。まぁ、だから、それまではもちろん独身だったわけですけど、主人は普通のサラリーマンでした。
   このあたりまで聞いて、不愉快になり、それ以上聞くのをやめた(氏の講演はまだ始まったばかりであった)。斯程かほどにだらしのない言葉の垂れ流しは、私の耐え得る限りを超えていた。
ジャイアンツの堂々たるエース、上原の、読点を挟んで延々途切れることなく続く言葉の流れ、「気持ちだけでは負けたくないんで、目標はいつでも次の一勝なんで、自分一人の力だけでは勝てるわけがないんで、……。」(「彼我の差」(『予備校講師の閑談』)参照)
という一節を思い起こした。

   花井幸子氏は、まさか、最近の若いものの言葉遣いは……、などと口走ってはいないであろうな。それともカタカナ言葉《デザイン》の世界は言葉とは無縁なるや。


記 二千十年五月

(注1)
   「人間を考える 〜究める〜」(ファッションデザイナー 花井幸子)(NHKラジオ第二、二千十年五月十六日放送 )のホームページによると、
「生活のすべてがデザインの場である」との考え方から、きもの、メンズ、宝飾品、食器等数多くのアイテムのライセンス商品を展開。大手企業のユニフォームデザインも数多く手がけています。幅広いファッションの世界を究めたデザイナーのお話です。

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