『雑想雑感』 (野島明) 
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《何者か》に、国家の、民族の、世界の歴史を売り渡した《優秀なる》彼等

   種種くさぐさの胡散臭い密約文書を大量に破棄した外務省全体(注1)(あくまでも全体であって一部の高級官僚ではない)には、自分たちの為してきたこと、為していることに後ろ指を差されるところは寸毫もないという自負もなければ、自分たちのなしてきたことを堂々歴史の審判に委ねる覚悟もなく、ばれたる困るという点においてこそ泥やら、使い込みやら、収賄やら、強姦やら、と似たり寄ったりのことをしているというやましさしかなかったことが、その振る舞いの至るところからにじみ出ている。くして、日本国の、日本民族の、ひいては世界の歴史の一部となるべき資料を《優秀なる》彼等は《何者か》に売り渡した。

   為すべきことを着実に為してその仕事ぶりに大きなる瑕瑾なく、国民の信頼に値するとき、国民の公僕たる官僚は優秀である。

   残しておくべき文書を保ちえず、ある日突然医師が不足になるという事態をもたらし、莫大な年金基金を濫費し、年金に関わる書類の天文学的な不備を放置し、国家財政の破綻が危ぶまれるほど財政赤字の積みあがっている現実を尻目に、天下り、渡りを繰り返して平然と莫大な血税を掠め取り続けるなど、到底優秀な官僚の為し得る業ではない。

   何とかの一つ覚えの枕詞じみた「日本の官僚は優秀で……」は現実と程遠いのであるから、出来るものなら(出来ることなのであるから出来るだけ速やかに)裁断機にかけ粉々にしてお払い箱とし、日本の官僚の能力はせいぜい凡庸であるのみならず、なによりも指摘すべき嘆かわしき点は、その性質たちの悪さであるという冷静な認識が早急に確立されてしかるべきである。

   俺たちは頭がいいのだ、俺たちは実際に大学入試で高得点を取り、一流大学に入学し卒業し、公務員試験でも高得点を取ってきたのだ、という反論たり得るとも思えぬ類の反論がなされるようであれば、君たちより高得点を取れる日本人は山ほどいるとだけ言っておけば足りよう。 各種試験で高得点を取れるものの全てが高級官僚を目指し、実際に高級官僚となっているわけではないということなど、自明のことではないか。各種試験で高得点が取れることに加え、実際の官僚たちには全く無縁の、優秀な官僚の備うべき能力、資質を豊かに備えながら、官僚となっていない人人の目眩むほど数多あまたいることか。

   「沖縄密約では財務省の文書などは不明のままだ」(注2)、という指摘に、さあ、財務省はどうこたえる。

   聞こえぬ振りをするであろうな。《優秀なる》彼等なら。恥ずかしい(注3)、などという反省が生じることは金輪際あるまい。


記 二千十年五月

(注1)
核密約文書、外務省幹部が破棄指示 元政府高官ら証言(asahi.com, 2009年7月10日3時8分)

日米密約関連文書消失で懸念表明 有識者委、報告書で(tokyo-np.co.jp, 2010年3月3日 02時02分)(共同)

核持込密約文書関連で「日本国総理大臣のローマ字署名」(『雑想雑感』)>参照。

(注2)
沖縄密約証言 歴史の真実こじあけた(社説) (tokyo-np.co.jp、2009年12月2日)

(注3)
”自民党の河野太郎国際局長は十日午前、党本部での外交部会で、日米間の密約問題に関する外務省有識者委員会報告書について「(過去の政権が)国民にうそをつき続けてきたのは厳然たる事実で、党員として極めて恥ずかしい。本来は自民党の手で明らかにするべきだった」と指摘、歴代首相らの対応を批判した。”(「うそを続け恥ずかしい」  密約で 自民・河野氏, tokyo-np.co.jp、2010年3月10日 夕刊)


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