『破れかぶれ時事想論』 (野島明) 
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二千十年六月

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さあ、どうする、海賊ども

   日本と同じく、中国とも韓国とも同じく、信頼に値する同盟国など持たぬロシアだ。

   ロシアと日本との違い?

   信ずるは力のみ、という点である。

   「信ずる」の主辞?

   決まっている。ロシアである。日本ではない。

   どんな力か?

   武力である。

   ソマリア沖で乗っ取られたロシアの船会社所有タンカー「モスクワ大学」をロシア海軍対潜哨戒艦が急襲、ロシア人船員二十三人全員を救出し、海賊一人を射殺、十人を拘束した(注1)

   ロシア(海軍)は捉えた海賊どもをどう処置したか。

海軍はその後、拘束した十人と遺体をゴムボートに乗せ、海上で「釈放」。食料と飲料水、信号発信機は与えたが、備え付けの衛星利用測位システム(GPS)を取り外したため、海賊らは“遭難”状態になった。ロシア国防省によると、ボートからの信号は一時間後、沿岸から約六百キロの地点で途絶。全員死亡したとみられるという。 (注1)
   別の見解もある。
昨夏、ロシア人運航の貨物船の武器密輸疑惑を訴えたため脅迫を相次いで受け、タイに移住したという海事専門家ボイテンコ氏は、ロシアのインターネット新聞「ガゼータ・ルー」で、ロシア海軍が海賊取り締まりという「人間狩り」を続けていると批判。海上への置き去りは「実際は海賊を殺害したが、問題化を恐れ、虚偽のストーリーを作ったのではないか」と語っている。 (注1)
   ロシアは謝罪などしない。言うまでもあるまい。
ロシアのイワノフ副首相は、今回の措置をめぐり、自国への移送と訴追には多額の費用と手間が必要と説明。海上での釈放は海賊の希望を受け入れた措置だった事情も示唆し、「ロシアに責任はない」と断言した。 (注1)
   嘘か誠か分からぬ海賊の捨て台詞が紹介されている。
ある海賊リーダーは「ロシア人の人質は他国と違う扱いをする」と復讐を誓ったという。(注1)
   この件をきっかけに、ソマリア沖で活躍する海賊どもが、カネに目が眩んだだけの烏合の衆であるのか、冷静に損得勘定をした上で強盗稼業に励む営利組織であるのか、幾分かなりとも分かるかもしれない。

   私の希望は、復讐を誓ったのなら、是非やってくれ、というものである。海賊がロシア人人質を過酷に扱った後のロシアの反応を見たい。ロシアの反応は私には予測がつくし、私の予測はまず外れることはあるまいという自信がある。私の予測が正しいことを確かめたい。

*

   さて、ロシアから北方領土を取り戻すにはどうすればいいか。いくら交渉を重ねようと無駄であろう。ロシアに、是非返したい、と言わせねばならない。ロシアがそう言いたくなる環境を整えねばならない。そのためには如何なる手順を踏まねばならないか。声高に論ずるわけにはいかぬ。北朝鮮の金正日一派の手で拉致された日本人を取り戻すには、ある環境を整えねばならないが、そのために踏むべき手順を声高に論ずるわけにはいかぬのと同様である。

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   東京新聞のこの記事(注1)が事実をどれくらい正確に伝えているのか、にわかには判断しがたいが、いかにもありそうな話しだ、とは判断し得る。

記 二千十年六月

(注1)
ロシア軍の“処罰” 海賊より手荒 (tokyo-np.co.jp, 2010年6月16日 朝刊)

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