『破れかぶれ時事想論』 (野島明) 
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二千十年六月

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熱遮蔽かく[heat-shield](注1)

   大報道媒体の社員として恐らく高給を食んでいるであろう記者連中がその持ち場についてさえ不勉強であるとしても、彼等の根っからの懶惰と怯弱と恣意とを日頃見せ付けられていては、いまさらさして驚くものではない(私?まことに口惜しきことながら、宇宙工学の専門家ではない)。従って、彼等が小惑星探査機「はやぶさ」の帰還を伝える記事の中で、見事任務を果たして燃え尽きた「はやぶさ」が持ち帰った標本容器[sample capsule](注2)の回収には触れても、標本容器を護っていた熱遮蔽殻[heat-shield]には全く触れないか、熱遮蔽殻も見つかった、と報じてはみても、この熱遮蔽殻の回収もまた重要であることが彼等の念頭にはなく、それゆえ、熱遮蔽殻をおまけ扱いしたとしても、やはりいまさらさして驚くものではない。

   標本容器回収を報ずる記事の内、熱遮蔽殻(も発見されたこと)に触れている記事は以下の通り(注3)

一方、落下途中ではずれた耐熱カバーは引き続き捜索している。はやぶさ:カプセル回収へ 豪の「聖地」に着地, mainichi.jp, 2010年6月14日 12時8分 更新:6月14日 12時25分)

また、近くでは、パラシュートを広げたときにカプセルから外れた耐熱構造の外殻も見つかった。 はやぶさのカプセル回収、異常なく外殻も発見 日本に空輸し分析へ, sankei.jp.msn.com, 2010.6.14 18:37)

大気圏に突入する際に出る熱からカプセルを守り、その後切り離された耐熱シールドも発見された。(「イトカワ」の砂入り?はやぶさカプセル回収 破損なし, asahi.com, 2010年6月14日19時25分)

大気圏突入時の高熱からカプセルを守った断熱カバーも、カプセルの近くで見つかった。( 「はやぶさ」カプセル破損なし…18日にも日本へ, yomiuri.co.jp, 2010年6月14日17時52分 読売新聞)

行方が分からなかったカプセルの耐熱カバーも14日に見つかった。 (はやぶさ:カプセルを回収 18日にも日本到着, mainichi.jp, 毎日新聞 2010年6月14日 17時59分, 最終更新 6月14日 23時25分)

また、近くでは、パラシュートを広げたときにカプセルから外れた耐熱構造の外殻も見つかった。( はやぶさのカプセルを回収 破損、異常はなし, tokyo-np.co.jp, 2010年6月14日 19時34分)

   "heat-shield{略称HTSHLD}"に相当する日本語が、「耐熱カバー」、「耐熱構造の外殻」、「耐熱シールド」、「断熱カバー」、「耐熱カバー」の五通りという体たらくだ。その名称も定まっていないものの重要性が認識されているはずもあるまい。

   NASAが「ダグラスDC8空中研究室[Douglas DC-8 airborne laboratory]」をわざわざ飛ばしたのは、大気圏に突入した熱遮蔽体に如何なる事態が生じるかを観察するためであり(注4)、こうした観察が出来るのは、NASA"Stardust capsule"に続き、これが二例目という、きわめて貴重な機会(注5)であるということだ。秒速12キロで大気圏に突入する熱遮蔽殻がどのように持ちこたえるか持ちこたえないか、研究者の注目を集めている(注6)のである。

*

「(標本)容器」と「熱遮蔽かく」は私訳である。

記 二千十年六月

(注1)
"The capsule is equipped with a heat-shield and a parachute to get it safely to the ground in Australia's Woomera Prohibited Area." (A perfect view of the asteroid capsule's Earth return, Jonathan Amos, bbc.co.uk, 17:06 UK time, Friday, 11 June 2010)

(注2)
"About three hours prior to re-entry, the main spacecraft will eject the sample capsule, pushing it out in front." (ibid)

(注3)
熱遮蔽殻(も発見されたこと)に触れていない記事は、「はやぶさ」のカプセル回収、18日に日本へ (nikkei.com, 2010/6/14 19:37)。

(注4)
"Nasa put at his disposal a Douglas DC-8 airborne laboratory and he packs it full of cameras and spectrometers to study how things behave as they scream through the atmosphere." (ibid)

(注5)
以下、Peter Jenniskens, a scientist affiliated to both Nasa's Ames Research Center and the Seti Instituteがこの記事を書いた Jonathan Amosに語った内容。
"We will set ourselves up close to the end point of the approach trajectory so that we have a frontal view of the capsule. Our main interest is in studying how hot the capsule becomes, how much light is being produced in the shockwave and how much material comes off the heat-shield. And when the heat-shield is recovered on the ground, we can see how well the material performed. It's like a field test of a thermal protection system. This is only the second time we have been able to do this. We did it before with Nasa's Stardust capsule. The opportunities to study how well a heat-shield performs in really fast re-entries - Hayabusa's capsule is coming in at 12.2km/s - are extremely rare." (ibid)

(注6)
The heat-shield, which was dumped by the canister in the final moments before touch-down, was also located. Engineers will be keen to see how well it stood up to the 12km/s descent. (Hayabusa asteroid-sample capsule recovered in Outback By Jonathan Amos, Science correspondent, BBC News Page last updated at 11:47 GMT, Monday, 14 June 2010 12:47 UK)


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