『TVドラマ寸評』 (野島明) 
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その三の(1)(2005年10月〜12月のドラマ)

初回〜第三回

1リットルの涙』(主演:江尻エリカ)(フジ系)……第二回途中で視聴終了。
不幸のたっぷりつまった物語も安直な幸福を見せびらかす物語も私の好みではない。

以下は私には答えを見出し難い問いである。

果たして、不治の病を抱えている人たちはこのドラマを見続けたいと思うのだろうか。あるいは、何かしらの不幸を耐え難い重荷と感じている人たちはこのドラマを見続けたいと思うのだろうか。

私はこのドラマを見続けたくない。

鬼嫁日記』(主演:観月ありさ)(フジ系)……第二回途中で視聴終了。
つぶすべき暇がたっぷりあって、なおかつこのドラマが自分の意に適うと思える人は見ればいい。私の場合、多忙、いや、貧乏暇なしである上に、このドラマには私をひきつけるものが何もないから視聴終了する。

断っておくが、上記の「貧乏暇なし」の「貧乏」は「暇なし」の枕詞ではない。私の場合、文字通り貧乏暇なしで、身過ぎ世過ぎのため多大の時間を安い単価で切り売りせねばならないのである。

熟年離婚』(主演:渡哲也)(テレ朝系)……視聴せず。
なんとなく見逃したということでもあり、そもそも見る気もなし、ということでもある。

相棒』(主演:水谷豊)(テレ朝系)
続編はここでは取り上げないのが原則であるが、この番組、無料で見るのが申し訳ないほど出来がいい。

脚本家の力量は高く評価されてしかるべきである。

あいのうた』(主演:菅野美穂)(日テレ系)……初回で視聴終了。
初回冒頭の数分で視聴停止。

菅野美穂演ずる主役の台詞には致命的ともなりうる余計な一言が混じっていた。そんな一言を省けない脚本家の長広舌に付き合えるほど私は暇を持て余していない。

ブラザー・ビート』(主演:田中美佐子)(TBS系)……第二回で視聴終了。
箸にも棒にもかからない、とは思わないから暇つぶしにはいいかもしれない。が、暇のない私は暇をつぶす際にも《暇つぶし》のタネを選ばねばならないのである。

どうせ暇をつぶすのであれば『相棒』やら『世直し順庵』を見て暇をつぶしたい。

今夜ひとりのベッドで』(主演:本木雅弘)(TBS系)
この現実世界のどこかに恐らく存在するのではあろうが、多くの人々の実生活とはかなり縁遠いと感じられるであろうし、それゆえ現実感が希薄であると言って差し支えないような生活風景を切り取ってドラマに仕立ててある。この現実感の希薄さには、今は亡きフランソワーズ・サガンの小説が切り取って描いていた風景とどこか通底するものがある。

切り取り方と描き方が不手際であればまるで嘘っぽい安物ドラマが出来上がる。サガンの小説がどうにか読むに耐える質を保っていたのと同様、このドラマも見て楽しむに足る質を保っている。私は今のところ(第二回まで)このドラマを楽しく見ている。

主演の本木雅弘は、脚本をじっくり読んだ上で出演するドラマを決めているのだろうなぁと推測させる数少ない俳優の一人である。

大奥〜華の乱』(主演:誰なんだろう?)(フジ系)……初回のみ視聴。二回目以降視聴せず。
初回は見たが、『今夜ひとりのベッドで』と時間帯が重なるため、二回目以降は見ることが出来ない。つまり、どうしても見続けたいという気にはさせてはくれなかったということだ。

花より男子』(主演:井上真央)(フジ系)
多量の財貨は豊かさとは無縁であるなんて今さらながらのことだ、とは思うのではあるが。

だまし絵ならぬだまし動画。初回を見てしまった。だまされて次も見ようか。

第二回の予告編に松島奈々子の姿を垣間見たこともその気になった理由である。

着信アリ』(主演:菊川怜)(テレ朝系)……視聴せず。
これが新番組であることに気づかなかった。『ER』を別にすると、十一時過ぎという時間帯のドラマを見る習慣はないのである。

野ブタをプロデュース』(主演:亀梨和也)(日テレ系)……初回で視聴終了。
亀梨にも山下智久にも全く興味のない私には到底見続けることは叶わない。勝手に放送を続けて下さいな。

女刑事みずき』(主演:浅野ゆう子)(テレ朝系)……視聴せず。
なんとなく見逃してしまっている。

恋の時間』(主演:黒木瞳)(TBS系)
描かれている風景の現実感の希薄さは『今夜ひとりのベッドで』と共通するものがある。

果たして見続けることになるかどうか、このドラマについてはいまだ不確定。

世直し順庵』(主演:藤田まこと)(テレ朝系)
同じ《他愛無さ》であれば、『鬼嫁日記』や『ブラザー・ビート』の《他愛無さ》より『世直し順庵』の《他愛無さ》の方が私の嗜好に適っている。つぶす暇の殆どない私は、見る番組を選んだ上で暇をつぶさざるを得ないのである。

危険なアネキ』(主演:伊藤美咲)(フジ系)……第二回途中で視聴終了。
《シュール》なドラマとして記憶に残っているものがある。 『マンハッタンラブストーリー』(主演:松岡昌宏、脚本:宮藤官九郎)と『ラブコンプレックス』(主演:唐沢寿明、脚本:君塚良一)である。いずれのドラマも私は大いに楽しんだ。

《シュール》なドラマに不可欠な要件は《はじけている》ことである。『危険なアネキ』ははじけ方が足りないと評したら褒めすぎであって、全くはじけていない、と、より正確には、でたらめ、と評すべきである。不出来な半端物を楽しむ趣味も暇も私にはない。

八百屋の娘「トマト」から『電車男』の主役、ついには月九主役にまで出世した伊藤美咲は熱演しているが、万事順調には行かないということか。 ついつい主演ドラマ第一作が見事にこけた水野美紀を想起してしまう。

「作品に恵まれる」ということは紛れもない幸運なのである。『海猿』に主演した伊藤英明はその「幸運」をあり難く思わねばなるまい(『TVドラマ寸評』その二の(2)(2005年7月〜9月のドラマ)参照)。くれぐれも「実力だ」などという錯覚に酔わぬことだ。


今期は総じて低水準のドラマが並んだことになる。が、こんなものだろうとも思う。

私が見続けるのは新番組は『世直し順庵』、『今夜ひとりのベッドで』、『恋の時間』、『花より男子』、続編として『相棒』、変わらず丁寧な作りの『慶次郎縁側日記2』である。  




(記 2005年11月)




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