『TVドラマ寸評』 (野島明) 
『TVドラマ寸評』の目次頁

その一(2005年4月〜6月のドラマ)

『あいくるしい』と綾瀬はるか

『離婚弁護士U』の天海祐希、『曲がり角の彼女』の稲森いずみと比べて、『あいくるしい』の綾瀬はるかの初々しく愛らしいこと。美しさの優っていることは言うまでもない。

必死さは健気としか映らず、まるで疎ましさを感じさせない綾瀬はるかの潔癖。

時間(とき)は女に過酷であって、多くの場合、かけがえのない現在はただの現在に過ぎない。十年後、綾瀬はるかが今より魅力を増しているかどうか、私には疑わしく思えるから、綾瀬はるかの時間(とき)よ、止まれ。お前は実に美しい。

市原隼人の若さも貴重である。 NHK月曜ドラマシリーズ『緋色の記憶』(鈴木京香主演) (原作はトマス・H・クックの『緋色の記憶』)(2003年1月6日午後8時放送開始)の少年の幼さはすでに消え、荒々しい若さに溢れていた。

いつの間にか萩原聖人はすっかりおじさんで、和久井映見も、女子高生(『高校教師』(TBS))だった桜井幸子も立派なおばさん。愛らしい歌声の主の黒人少年は今や白人マイケル・ジャクソン。タモリ(「トリビアの泉」のタモリ様親展)もタケシもえらくなってしまった。

田舎町のタクシー運転手の収入であの人数の家族を養っていけるのどうかはさておき、気合の入った野島伸司の秀作であった。

*

『瑠璃の島』と成海璃子

合点しにくい抜擢(注1)もあるが、これは違う。『瑠璃の島』の主演俳優(注2)成海璃子のことだ。(準備運動もしないで)いきなり駆け出すことも、駆けながら涙を流すことも、君の時代の特権だ。

録画を早送りすることがほとんどなかった。見るものをひきつける(文体ならぬ)画体を、かつて同じ局で放映された秀作『すいか』(出演:浅丘ルリ子、小林聡美)に漂っていた空気を似たものを感じた。

『太閤記』(NHK)で秀吉役を演じた青年が老境を迎えていた。緒方拳、見事に美しい老人を演じていた。

*

2005年第二四半期(4月〜6月)のドラマ

最終回まで見たのは『大岡越前』(続編?―もちろん見る)、『エンジン』(続編?―不要)、『離婚弁護士U』(続編?―見る)、『曲がり角の彼女』(もういい)、『夢で逢いましょう』(これで十分)、『恋におちたら』(こんなもん)、『瑠璃の島』(第一等)、『あいくるしい』(僅差で第二等)。

何度か見たのが渡瀬恒彦主演『おみやさん』(いつしか最後の十分は割愛するのが習いとなった。お得意の台詞「まだやり直せる」を散りばめた毎度毎度の説教の白々しさ(注3))。

最初の一二回見たのが『アネゴ』(たぶんに脚本の不出来のせい。篠原涼子は私が気に入っている数少ない俳優の一人である。どれくらい気に入っているかといえば、夏川結衣にも鈴木京香にも言わないことを篠原涼子になら言えるくらい気に入っているのである。「結婚しないか」。何かの間違いで私のこの呟きが篠原涼子の耳に入り、間違いが増幅して篠原涼子が「いいわ」と応じたら、とりあえず結婚してもいいかと思っている(補注)くらい気に入っているのである(注4)。それほどに気に入っている篠原涼子主演ドラマであるというのに)、それと『タイガー&ドラゴン』(長瀬智也には荷が勝ちすぎで、演技になっていなかった。「桜庭裕一郎」(フジテレビ系『ムコ殿』)ははまり役で、毎回楽しく見た)。

一度も見なかったのが『アタックNo1』、『汚れた舌』、『はぐれ刑事純情派』。

『はぐれ刑事純情派』(藤田まこと主演)と『はみだし刑事情熱系』(柴田恭兵主演)から次第に私を遠ざけることになったのはきまって最後に用意されている説教時間のせいである。

付録

大御所の『優しい時間』

前宣伝も賑々しかった大御所の脚本による『優しい時間』。ずいぶんとありがたがっていたようだが分かるはずであろうに。

状況を呼吸する皮膚感覚が(すでに)麻痺に近いほど鈍っていることに気づかぬという致命的欠点。主人公の商事会社勤務時代の同僚が訪れて、会社に戻らないか、と誘う場面、借金苦の家電店経営者が自殺するという挿話の空々しさ。

憂き世離れした物語に徹するべきであった。田舎の喫茶店で二人も従業員を雇って果たして経営が成り立つものか、などという疑問はもちろん蹴っ飛ばして、である。

結局、私は最終回まで見たのだけれども。

大御所の脚本を随分とくさしているが、あんたにもっとましなものを書けるのか、って?

書ける(即答)。

(記 2005年7月)


(注1)
『科捜研の女』(前回のシリーズ)で主演の沢口靖子と絡む刑事役に抜擢された若い俳優(時折り見かける顔であるが、名前に心当たりはない)を思い出している。 その演技はがさつの一言に尽きるものであった。とはいえまだ若い俳優であるからその将来性については何も言わない。

同番組に木場刑事役(前回のシリーズで殉職)で出演していた小林稔侍は見事な大根役者である(ではあるけれども、私は小林稔侍が嫌いではない)。『税務調査官窓際太郎の事件簿』はほとんど見逃していない。

(注2)
『(続)折々のコラム』(「女優、女流詩人、女流棋士、女流知事」)参照。

(注3)
そういえば、渡瀬恒彦主演「顔貌―顔のない殺人者」(テレビ朝日2005年7月7日放送)ではお得意の台詞を聞けなかった。

自分を凌辱した上にその場面の写真を種に父親を脅して自殺(未遂)に追い込んだ男たちをすでに三人殺し、更に残る一人を殺そうとする旅館の女将(藤谷美紀)に、なぜか渡瀬恒彦は得意の台詞「まだやり直せる」を口にしなかった。

(注4)
『片言隻句集』(野島明)にこんなのがある。

「軽挙妄動の極みのひとつか、人を好きになっての結婚……」

(補注)
この部分の記述の有効期限は2005年12月31日。


「トリビアの泉」のタモリ様親展
NHKラジオ中国語講座にはかつて「チンホーケー」氏が出演していた。

表紙頁に戻る
 
© Copyright DIGBOOK.COM
(許可なく複製・転載することを固く禁じます)

  協力:野島明事務所