『TVドラマ寸評』 (野島明) 
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二時間ドラマ評 その一 

『蓮丈那智フィールドファイルT・凶笑面』

祝 木村多江主演第一作

午後九時に始まるのが概ね恒例となっている「二時間ドラマ」をこの欄で取り上げることは滅多にないはずである。出来の悪さはいよいよ(あるいは、相変わらず)目を覆うばかりであるという評価は外れてはいないであろう。一時間付き合うことも稀であるし、犯人自身が犯行動機を語りこと細かに犯行手口を説明する場面まで付き合う機会など最近では殆どない。出来の悪いドラマ評に時間を割けるほど私は暇を持て余していないのである。

『張込み』(出演:ビートたけし、緒方直人、鶴田真由)(注1)のような印象に残る秀作は極めて稀である。 『終わりに見た街』(出演:中井貴一、木村多江)(テレ朝、十二月三日(土)、午後九時放送)も出だしはまずまずであったが、終わりよしというわけには行かなかった。打ち上げには成功したものの、帰還に失敗した宇宙船に例えられよう。打ち上げに成功するだけでも大したものだ、というのが「二時間ドラマ」の現状ではあろうが。

『終わりに見た街』はラジオドラマであっても足りた、と思われてならない。ちなみに、私はチャン・イーモウの『英雄』を極めて高く評価している。

余談になるが、十二月二日(金)の「徹子の部屋」のゲストが木村多江であった。出先で見かけたテレビ画面でそのことを知った。あらかじめ分かっていれば録画しておいたのにと少々悔やまれた。なにせ、「徹子の部屋」を見る習慣はないのである。

蓮丈那智フィールドファイルT・凶笑面』(主演:木村多江)(フジ系、九月十六日(金)午後九時放送)(録画を見終えたのは十一月二六日(土))

木村多江にはこれが主演第一作であるのかどうか、わずかな手間を惜しまず調べてみた。所属先らしき「融合事務所」のHP(注2)を見ても、出演作一覧はあるが、主演作があったのか無いのか、特に記述が無い。

関係者全員が共犯であるというのはどこかで聞いたような話しのつくりではあったが、最後まで引っ張りきれたというのは立派なものであった。木村多江のクローズアップで終わる最後の場面まで私は見た。この最後の場面、木村多江ファンの絵作りであった。

主演第一作がこけると大変だ、という話しは、水野美紀についても語ったことがある(「折々のコラム 6.輝くために必要なもの―水野美紀の場合」)し、思い返すと原沙知絵の主演第一作(日テレ系)(注3)も見事にこけ、その後、原沙知絵に主役は回ってこない。大変なことになるという例である。

私が木村多江を見初めたのは、本木雅弘主演の連ドラ『水曜日の情事』(注4)で銀座のクラブのママを演じていた着物姿の木村である。利益をあげようなどという世知辛さとは無縁のおっとりしたママ姿は現実離れして愛らしいものであったし、現実の数多のママ連中に比しても、その若々しい美しさは断然勝るものであった。

唐突な感想を一つ。

列島の津々浦々に生息する《M男》くんたち、このドラマを見てさぞや物欲しげな表情を浮かべていたことであろう。そんな物欲しげな顔がぞろぞろと私の目に浮かんだのであった。

ともあれ、木村多江主演第一作は立派な合格点であった。目出度いことである。




(記 2005年12月)


(注1)
緒方直人公式サイト(http://www.naotoogata.com/profile/index.html)によれば、

松本清張没後10周年記念企画
ビートたけしドラマスペシャル「張込み」
下岡警部 役
2002年(平成十四年)  3/2 21:00〜11:21 OA
原作=松本清張 脚本=矢島正雄 監督=石橋 冠
プロデューサー=五十嵐文郎 中山秀一 太田雅晴
制作=テレビ朝日 5年D組
主な出演者=ビートたけし 伊武雅人 保阪尚輝 田辺誠一 鶴田真由
☆ 第10回橋田賞 受賞

(注2)
"http://www.yougooffice.com/kimuratae/history.html"参照。

(注3)
『シンデレラは眠らない』(日テレ系、2000年)であったと記憶している。"http://www.ken-on.co.jp/artist/html/hara.html"参照。
伊東美咲とW主演の『逮捕しちゃうぞ』(テレ朝系、2002年)はお粗末な連続ドラマであった。

(注4)
「水曜日の情事」(01.10) (http://www.fujitv.co.jp/jp/b_hp/jyouji/)の キャスト欄(「 佐倉詠一郎(35)…本木 雅弘、 佐倉 あい(33)…天海 祐希、 前園 耕作(29)…原田 泰造、 岡島 明洋(31)…谷原 章介、 浜崎由香子(22)…伊東 美咲、 沖野 晶午(32)…北村 一輝、 天地  操(33)…石田ひかり」)に木村多江の名は見当たらなかったが、所属事務所のHP(注1参照)の出演作一覧中には「CX 「水曜日の情事」レギュラー(01.10)」とあるから、たぶんこのドラマであると思う。


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