(続)折々のコラム(野島明)
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派遣切りの迅速、欠陥対応の緩慢

   リーマン・ブラザーズが連邦破産法第11章の適用を連邦裁判所に申請したのは2008年9月15日である。

   それに先立つこと四十日、 「トヨタ自動車九州(福岡県宮若市)は5日までに、主力の北米市場での販売不振に伴う減産を理由に、派遣社員計約800人の契約を解除した(注1)。」

   派遣切りのこの迅速とは対蹠的な、「こども社長」(注2)を代表取締役に据える世界有数の大企業が示した製品欠陥への対応の緩慢は、滑稽なほど悲しく、無様である。

   派遣社員計約800人の迅速な首切りによって如何ほど出費を抑えられたのか、如何ほど帳簿上の利益を増すことができたのか。

   製品欠陥への対応の悲しく無様な緩慢のもたらす短期的及び長期的損失が如何ほど膨大であるか、ひとごとながら、私にはざっと見積もるのさえ恐ろしい。

   派遣社員の首を迅速に切ったのも、ひたすら増産に励んだのも、製品に不具合などないことにしたかったのも、もっともっと儲けたかったからである。際限のない「もっと」である「もっともっと」は、《リーマン・ブラザーズ》一党を突き動かしていたのと同じ強欲であることに、この世界的大企業の経営陣及び労働組合の親玉連は、さらにまた社員たちは気づいているであろうか。

   環境にやさしい?

   人には?

という、自ずと湧き上がる疑問(注3)


記 二千十年二月

(注1)
減産で派遣800人契約解除 トヨタ九州、北米不振で(tokyo-np.co.jp、2008年8月5日 12時04分)

(注2)

すでにネットの掲示板ではトヨタのCMになぞらえ豊田社長を「こども社長」という言葉が飛び交い始めた。この苦境を乗り越えるには、本当の意味での現場主義が必要だ。(トヨタ“こども社長”やっと会見 「空々しい」対応に批判噴出、zakzak.co.jp、2010.02.06)

(注3)
トヨタは好況下でも賃上げをせず、史上最高益を上げながらも、部品メーカーには部品価格の引き下げを求め、世界的景気後退以降、非正規社員の首を切り、部品メーカーにはさらに価格引下げを要求した、などという記事を日本の主流報道媒体で目にすることはない気がするが、私の気のせいか。(Toyota Sees Growing Anger From Suppliers in Japan By MARTIN FACKLER, www.nytimes.com, February 24, 2010)参照)。


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