(続)折々のコラム(野島明)

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主流報道媒体打って一丸の実にお見事な「情報統制」もしくは「報道自主規制」
"PRIDE"放送中止を導きの星[lodestar]として

   私が取り分け楽しみにしているテレビ番組といえばPRIDEK1の各種大会の放送である。

   それが寝耳に水のPRIDE放送打ち切りだ。が、当のフジテレビは打ち切りの理由を説明しようとしない。

フジテレビは5日、人気格闘技「PRIDE」の放送を今後、すべて取りやめることを発表した。

   同局は「契約先のドリームステージエンターテインメント(DSE)による契約違反が判明したため」と説明。同日をもって契約を解除し、番組の放送、またイベント開催への関与を中止する。“契約違反”については「放送を継続することが不適切な事象が、DSEの内部であった。これ以上は守秘義務があり申し上げられない」とした。10日放送予定の番組は中止。代替番組は「調整中」という。(注1)

   フジテレビの性急かつ徹底した対応(注2)を見る限り、尋常ならぬ事態が生じているらしいことは容易に想像できる。

   「今回のフジテレビによる契約解除を、ただ事ではないと判断した吉本興業」 (注3)は所属タレントのHGをハッスルから撤退するよう説得する意向であると報道されている。

   アントニオ猪木の発言は尋常ならぬ事態の根を示唆している。

   (興行の)規模を縮小するとか(運営の)形を変えない限り存続は難しい。あまりにも(選手の)ギャラが上がり過ぎた。それに、青少年に夢を贈るビジネスとしては影があっちゃいけない。(注4)

   青少年に夢を贈るビジネスとして、影があってはいけない。ギャラも上がっているし、形を変えない限り(厳しい)。(注5)

   問題は「放送を継続することが不適切な事象」 (注1)、「ただ事ではない」「事象」、「影」の中身である。脱税や決算の粉飾ではあるまい。K1は表向き代表者が変わって何事もなく続いている。考えられるのは暴力団との抜き差しならない関わりである。

   サッカーにもサッカーワールドカップにも関心のない私は、ワールドカップのテレビ放送を見たくもなければ見る予定もない。そんな私にとってPRIDEのテレビ放送打ち切りは言わばワールドカップの放送中止以上に重大問題なのであり、放送打ち切りの背景にいかなる事情が隠されているのかは極めて重要な情報なのである。

   その重要情報を伝えないのは「守秘義務があり申し上げられない」 (注1)というフジテレビだけではない。

   主な報道媒体のウエッブ頁を見て回った私はついには愕然たる思いに駆られることになった。あたかも「守秘義務があり申し上げられない」かのように、この件は一様に等閑視されている。この件については報道しないだけではなく、取材さえしていないのではないかと、即ち「報道(及び取材)自主規制」が行われているのではないかと疑われてくるのである。

   主流報道媒体は市民が当然に知ってしかるべきことを当然のごとく報道していると信じて疑わないほど、私は能天気ではないが、これほどにあからさまな報道自主規制もしくは(注6)情報統制を体験するすることは極めてまれである。私はそれほどに穏やかで暢気な日々を過ごしてきたということかもしれない。

   以下は、6月16日に"http://www.sponichi.co.jp/battle/"の頁で見かけた「ニュースアクセストップ10」である。第一位から第五位までがPRIDE関連記事である。

ニュースアクセストップ10
1 フジテレビ PRIDEから撤退

2 PRIDE“激励”公開会見

3 PRIDE“黒い交際”完全否定

4 猪木PRIDE“参戦”示唆

5 ハッスル・エイドは全国放送中止

6 大毅アレレ?メンチ切り7秒で終了

7 最高やな!大毅 聖地で圧勝&熱唱

8 強さ証明!マッハ64秒KO

9 瀧本まさか…ドクターストップ

10 SタイガーVSみのる遺恨戦

6月4日〜10日

   PRIDEのテレビ放送打ち切りは私を含め多くのPRIDE(及び格闘技)ファンにとって重大問題なのである。

   asahi.comの記事に、この問題に対する主流報道媒体の姿勢の一つを見ることが出来る。

   フジテレビにとってPRIDEは優良番組だった。昨年末の「男祭り」の平均世帯視聴率(ビデオリサーチ調べ。関東地区)は17.0%(午後8〜11時)、5月5日の「無差別級GP開幕戦」も17.6%を記録した。(注7)
   と伝えるその記事からは、《いわば視聴率のためなら魂も売り渡しかねないような》テレビ局が「優良番組」を突如として放棄した理由を独自調査したらしき形跡は全く窺い取れない(注8)。記事の見出し「どうなるPRIDE フジの放送中止」が示すとおり、その報道(報道しない)姿勢は文字通り「高みの見物」側のそれである。

   問題の根は浅かろうはずもなく、不気味なほど深く根を張っていると想像するほかはない。「問題の根」とは「PRIDEのテレビ放送打ち切りに隠された事情」ではもちろんない。「PRIDEのテレビ放送打ち切りに隠された事情を主流報道媒体が報道しないことに隠された事情」のことである。


記 〇六年六月十六日(金)

(注1)
フジテレビ「PRIDE」放送打ち切り(sanspo.com、6月6日)

(注2)
「人気格闘技「PRIDE」の運営会社ドリームステージエンターテインメント(DSE)に契約違反があったとして放送打ち切りを決めたフジテレビが、PRIDE出場選手らを番組に出演させないよう、制作会社などに通達していたことが6日、分かった。マスコミ各社に契約解除のファクスを送った5日に通達したもので、関係者は「関連する人物、選手は一切、番組に出演させないようにという話が回ってきた」と明かした。」(PRIDE出場選手、フジが起用禁止…各所に通達、hochi.yomiuri.co.jp、2006年6月7日06時00分)

(注3)
エースHGが「ハッスル」離脱の可能性も(nikkansports.com、2006年6月8日9時21分 紙面から)

(注4)
猪木が救うんダ〜ッ!…“窮地”PRIDE戦士救済へ(hochi.yomiuri.co.jp、2006年6月8日06時03分)

(注5)
猪木がPRIDE戦士を救う(daily.co.jp、2006年6月8日)

(注6)
この「もしくは」は英語で書けば"or"であるから、「すなわち」と読んでも差し支えない。

(注7)
どうなるPRIDE フジの放送中止(asahi.com、2006年06月13日14時15分)

(注8)
「フジテレビは「運営会社に不適切な事象があった」として詳細は明らかにしていない。PRIDEの運営会社DSEの顧問弁護士は「DSEが暴力団と関係している」という一部報道が、決定に影響したとしている。」(同上)


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