(続)折々のコラム(野島明)

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A Dialogue Unplugged (2)

―ぶっちゃけ―


世界最古の職業ですって?
 

「世界最古の職業だなんて言い訳で売春が認められるとでも思ってるのかしら。女性の尊厳を傷つけるどころか、女性そのものの破壊、究極的な女性に対する暴力だわ。その上、麻薬組織や犯罪組織の資金源となってるのよ」

「麻薬組織や犯罪組織を叩くのが先決じゃないんでしょうか」

「それが簡単じゃないから、売春の全面的非合法化を進めているんでしょ」

「売春を根絶できるんでしょうか」

「できるできないの問題じゃないの。現代社会が売春を認めるのか否定するのかの問題なのよ」

「売春の世界から犯罪組織を一掃するというのはどうでしょう」

「あなたは売春を認めたいわけ?」

「売春と言ってもずいぶん幅広いような気がするんですよね。女性に何か贈り物をして、その見返りというか、女性が感謝の気持ちから、じゃ、いいわ、なんてのも売春に含まれるんでしょうか」

「売春じゃない。当たり前よ」

「食事をおごってその帰りにホテルに連れ込むなんてのは?」

「取引でしょ、それ。現金とセックスの代わりに、食事とセックス、立派な売春だわ」

「衣食住の面倒を見る代わりにセックス、というのは?」

「愛人を囲うなんてのは売春に決まってるでしょ」

「ぼくの言うのは、結婚してですね、一生養ってやる代わりに……、ということなんですが」

「それも売春じゃないの、厳密に言えば。でも、結婚まで売春の一種だからって法律で禁止するわけには行かないわよね。セックスしたければ結婚すればいいのよ」

「結婚しないとセックスできないんでしょうか」

「交際すればいいじゃない」

「交際するとどうしても男が金を使うことになるというか……」

「全部男性もちというか、男性だけがお金を払って交際して、セックスすればそれは売春よ。交際する時は全て割り勘にすればいいのよ。そうすればセックスしたって売春にはならないわ」

「クリスマスプレゼントなんか、男から女への贈り物の方がどうしても高価なものになるんですよね。クリスマスディナーからホテルの宿泊代まで割り勘だなんて言ったら付き合ってくれる女の人はいませんよ」

「いるわよ。わたしなんかそうよ」

「《わたし》、はともかく、ですね、少ないですよ」

「数の問題じゃないわ。そういう女性はいるんだから、そういうきちんとした女性と交際すればいいの」

「《わたし》、みたいな……」

「そういうことね」

「女性との交際の苦手な男も、いるんですが、というか、いると思うんですが……」

「そこまで気にしてられないわ。努力するしかないわね」

「結婚するか、女性と割り勘で交際しないと、セックスできないということになるんでしょうか」

「あなたの言い方、変よ。結婚するか、女性と割り勘で交際すれば、セックスできるんじゃない」

「女性と交際できないような男は結婚も出来ないわけですから、そんな男はセックスするな、ということに……」

「あなたの言い方、変よ。女性と交際したり、結婚したりすればセックスできるの」

「でも現実には、女性となかなか交際できないような男がいるわけですから、そういう男はセックスするなって言っているに等しい、と思うんですよね」

「セックス、セックス、って、そんなにセックスしたいのかしら。他にやることあるでしょ」

「年金生活者なんか、他にやることがないからセックスしてるみたいですし……」

「夫婦ででしょ。やればいいじゃない、夫婦なんだから」

「互いに独身のいい年をした男と女がけっこうセックスしてるみたいですし……」

「そんな話し、どこで聞いたわけ?」

「ちょっと小耳に挟んだというか」

「余計なこと挟んでるのね。そんなこと挟んでるから頭の中がセックスだらけでしょ。あなたはまだ若いんだから。年金生活者じゃないのよ、やることのない」

「若くなくてもセックスしてるみたいというか、たぶんセックスしたいんだろうなと……」

「あなたが年寄りの心配してどうするの。年寄りは我慢できるわ、というか、しなくっちゃいけないわ」

「でもぼくみたいな若い男はなおさらどうしてもやりたいっていうか……」

「オナニーすれば」

「オナニーでは満足できないこともあると思うんですよね。それに、女性の身体に触れないまま一生を終わるというのも……」

「単なる贅沢でしょ、それ。彼女もいない、奥さんもいない――セックスできるわけないじゃない」

「一人エッチする、ですか。あぁ、ダッチワイフなんてのもありますね」

「あなた、変態?」

「なにが?ダッチワイフですか?」

「越冬隊が南極に持っていくんですってね、それ」

「オナニーの変形ですよね、ダッチワイフは。やっぱり一人エッチですから」

「一人エッチで満足できないんなら、我慢すれば?」

「なかなか容易じゃないんですよね、我慢」

「わたしなんかできるわよ」

「ぼく、まだ若いですから」

「わたしは年だ、って言いたいの?年だから我慢できるんだって?」

「多少はそういう面もあるんじゃないかとは……」

「若い時だって我慢できたわ、わたしは」

「でも男は、というか、男の性欲は……。それに、女と縁のない男は一生セックスなどしなくていいんだ、女の身体を知らずにくたばればいいんだ、って言われてる気がして」

「だから売春を認めろって?」

「熱き血潮になんたらかんたらなんて歌もあるくらいで……」

「若き血、とかいうんじゃなかった、それ?いいわよね、若き血」

「歌ですか、若い男ですか?」

「歌よ。何考えてんの。あなたといっしょにしないで」

「割り勘の交際をすれば、結婚すればいいんでしたよね」

「分かってるんじゃない。してはいけないことは我慢する、人間の基本でしょ」

「女性との交際も苦手で、このままじゃ結婚なんて出来そうもないぼくは我慢するしかないんでしょうか」

「あなたの泣き言を聞いても仕方ないわ。頑張って交際してみなさいって」

「ソープもヘルスも、デリヘルもマンヘルもホテトルもマントルも全部禁止になっちゃったら……」

「どうなるわけ?」

「強姦するしかないかもしれない……」

「バカ言ってんじゃないの。重罪よ、それ。そのデリヘルとかホテトル、マントルって?」

「デリヘルってのは電話とかネットで注文すると自宅まで来てくれるんです。デリバリーヘルスのことでしょうか。マンヘルはマンションヘルス、ホテトルはたぶんホテルトルコの略で、マントルはマンショントルコの略だと思います。トルコという言い方はもうしませんけど。ラブホテルとか業者が借りてるマンションでやるんですけど」

「詳しいんだ。で、ヘルスって?」

「一応ホンバンはなし、ってことになってますけど……」

「ホンバンって、あれよね」

「あれです」

「あれなしで何やるの?」

「手とか口とか、女の子によってはアヌスとか使って……」

「肛門性交ね。痛そう……」

「よく締まるなんて聞きますけど……。たっぷりあれ用のグリースを塗るって言いますよ」

「聞くだけなの?」

「まだなんですよねぇ。なかなか勇気がなくて」

「ハイハイ。で、そういうの、したことあるの?そういうところ、利用したこと」

「まぁ……。そんなにはありませんけど」

「全部禁止よ、当然じゃない。売春でしょ、みんな」

「猥褻系の犯罪が増えるような気がするんですよね」

「みんなとっ捕まえて刑務所にぶち込んでやればいいのよ」

「でも男の性欲は……」

「そんなにやりたいの?」

「男ってのは……」

「そうねぇ……。やらせてあげましょうか?あなた、私の好みじゃない、っていうか、やりたくないタイプだけど、私ももうお嬢ちゃんぶって気取ったこと言う年でもないし……」

「それだけは勘弁してください」

記 〇六年一月

(注1)
ある記事で目にした英国内務相Fiona Mactaggart氏の発言には多少触発された。
The Home Office minister Fiona Mactaggart told the Guardian that it was wrong to regard those involved in prostitution as sex workers. She said tough measures were needed to tackle the markets for prostitution. "I'm not tolerant of the view that prostitution is the oldest profession in the world and there's nothing we can do to reduce it," she said. "Prostitution blights communities. We will take a zero tolerance approach to kerb crawling. Men who choose to use prostitutes are indirectly supporting drug dealers and abusers. The power to confiscate driving licences already exists. We want the police to use that power more."
(New crackdown on prostitution by Alan Travis, home affairs editor and Ben Farmer, Guardian Unlimited, Wednesday December 28, 2005)

セックス相手を求めて車をのろのろ走らせる男ども[Kerb crawlers] も厳しく処罰されるとのことである。処罰の具体的内容は、運転免許没収や新聞に氏名を公表[having their driving licences confiscated and being named and shamed in local newspapers.](ibid)。

ある調査によれば。六十歳から七十四歳の年齢層の男性の場合三人に一人が、女性の場合四人に一人が少なくとも週に一度セックスしている。
"According to a 1999 survey sponsored by AARP, one-third of men and one-fourth of women ages 60 to 74 have sex at least once a week." (Never Too Old, Washington Post.com, Tuesday, July 17, 2001)

"AARP"は合衆国の強力な圧力団体の一つ"American Association of Retired Persons"「アメリカ退職者協会」

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