予備校講師の閑談
英語講師・横井順

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彼我の差


  この世にいき(をし)ていれば多少を問わず異和を感ずる対象には事欠かない。その一つ、「スタンス」というカタカナ語をゴルフや野球を語る以外の場面で用いることについて。

  『ジーニアス英和』には次のような記載がある。

stance
 1 〔ゴルフ・野球〕打者の足の位置[構え],スタンス.
 2 〔…に対する〕構え,立場,態度〔on〕.
 3 《スコット》バス停留所.
  「この問題に対するわたしのスタンスは、…」といった使われ方をする。「態度、立場、姿勢」という言葉を用いれば過不足なく適切な日本語表現が成立するにも拘わらず使われ続けている言葉、「スタンス」。

  「態度、立場、姿勢」という語を用いて足りる場面で「スタンス」という言葉を用い続け、日本語の、殆ど生理的なきしみを意に介さない人たちを目の当たりにするにつけ、いつもどこかしらに私が感じている彼我の差、深さも拡がりも判然としない暗い溝。

  ジャイアンツの堂々たるエース、上原の、読点を挟んで延々途切れることなく続く言葉の流れ、「気持ちだけでは負けたくないんで、目標はいつでも次の一勝なんで、自分一人の力だけでは勝てるわけがないんで、……。」

  格別意味があるわけではない単なる合いの手、「そうですね」(『宗さん、次の旭化成陸上部の監督は弟さんですか、それとも谷口さんですか』、すると宗監督、『そうですね…』)や、不気味な半疑問形(元巨人、中畑の十八番)もそうだが、耳にして、いつもどこかしらに何とはない障りを感じている言葉遣いの一つである。自分では決して口にすまいとかなり堅く心に決めてはいても、思わず使ってしまっている自分に気付くことがあるかもしれないんで…。ここにはいかほどの彼我の差。


記 99年8月4日
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